第二章 アライメントとエネルギー

ここでは、骨の配列(アライメント)について解説をしていきます。この章を読み終えた時に、以下のことが理解できるようになります。 

 ①適正なアライメントをキープした姿勢が望ましい
 ②姿勢を作る小さな筋肉を鍛えてから 大きな筋肉を鍛えると最強になることができる
 ③姿勢を改善すると見た目が変わる

アライメントとは

アライメントは「配列」いう意味です。ここでは、骨の配列(積みあがったり、並んだりしている様子)をアライメントと表現します。

【適正なアライメントをキープする小さな筋肉】

インナーマッスル

積み重なった骨のアライメントを“支える”筋肉たちがいます。

これらの筋肉は、骨のすぐ近く(体の深層部)に“無数に”存在しています。これらはとても小さく、細かく、大きな力を生み出すことはしません。その代わり、長い時間、骨を支え続ける力を持っています。

これらの小さな筋肉が働かない、支え続ける力が弱くなると適正なアライメントをキープすることができず 姿勢が悪くなります。

【大きな動作、パワーを作る大きな筋肉】

大きな動きを作ったり、パワーを生み出しているのが 体の表面上にある大きな(表面積が広い)筋肉です。

これらの筋肉は、骨を支えることには関与していません。大きな力を発揮するときに必要な筋肉です。

職業によっては、大きな筋肉を発揮し続けることがありますが、通常、24時間継続して使い続ける筋肉ではありません。

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消費エネルギーについて

【どちらが先か?】

適切なアライメントをキープする小さなか筋肉を鍛えることが、トレーニングの「基本」と考えます。なぜなら、健康に生きるために必要な筋肉だからです。大きな筋肉を鍛えることは「応用」です。

勉強でも芸術でもスポーツでも、人生そのものもそうですが、何事も基本が大事です。基本をおろそかにして派手な応用を行っても(行おうとしても)、良い結果は得ることはありません。

アライメントを無視した筋トレは、害悪にしかなりません。
痛みを発症させたり悪化させたり、姿勢を悪くさせたり、不健康を招くだけです。トレーニングをしたら膝が痛くなった、腰が痛くなった、というのはこのためです。

ただし!適切なアライメントを維持しながら、大きな筋肉を鍛えることができたら、“あなた史上最強”になれます。

【消費エネルギー】

「大きな筋肉を動かすとたくさんのエネルギーを消費することができる」という甘い言葉に吸い寄せられるように、筋トレを始める人がいます。筋トレは、主に、表面上の大きな筋肉を鍛えることだけにフォーカスしています。

大きな筋肉は24時間働き続けるものではありません。

大きな筋肉を鍛えると、基礎代謝率が上がるというメリットはもちろんあります!

単純計算で考えて、週に一度、一つの筋肉(部位)を10分動かしただけで、どれだけのエネルギーが消費されるでしょうか?

【参考サイト】
 身体活動とエネルギー代謝 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
 消費カロリー早見表|活動量計カロリズム|株式会社タニタ (tanita.co.jp)

小さな筋肉はたくさんのエネルギーを必要としません。

ですが、ほぼ24時間、365日働き続けます。これまで働いていなかった小さな無数の筋肉たちが、しっかりと働きだしたらどれだけのエネルギーが消費されるでしょうか?

アライメントを支える小さな筋肉の消費エネルギーは(おそらく)基礎代謝の中に含まれていると思うので、小さな筋肉単体でどれだけのエネルギーを消費しているのか、私にはわかりません。

そこで、ここでは横隔膜(呼吸をするときに必要な筋肉)を例に挙げて考えてみようと思います。

1分間に15回呼吸をするとして、1日に1万回超。(これは本当)
呼吸の浅い人の横隔膜(筋肉)の収縮の大きさが下左図だとします。腹式呼吸ができる人は、下右図のように横隔膜が大きく収縮します。(収縮する大きさは個人差があり、筋力差があることも本当)

図を見ただけでも、どちらがエネルギーを消費している想像できると思いますが、ここではあえて数値を当てはめてみます。

左図の方では1分間で「1のエネルギー」を、右図では「5のエネルギー」が消費されるとすると、24時間で40,000の差になります。(この数字は適当)
一週間、一か月、一年・・・どれだけの差が生み出されるでしょうか?

繰り返しますが、
・アライメントを支える小さな筋肉は無数にあります。
・これからはほぼ24時間働き続けている。
・姿勢が崩れている=最大限働いていない小さな筋肉がたくさんある。

姿勢を改善したら、エネルギー消費量はどれだけ変化するでしょうか?

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力の方向と見た目について

【力の方向】

ジャンプをしてください。または想像してください。

まず、下を向き、肩や胸に思い切り力を入れて上半身を固めます。そのままジャンプをします。

次に、上半身の力を抜き、腕を大きく振りながらジャンプをします。

下を向いて上半身を固めたときの方が、体が重く感じたはずです。

ジャンプは、地面から離れていく力の動作であるにも関わらず、下を向く=頭の力の方向が下になる、胸周りを固める=力の方向を止める、という行為になるため、脚に抵抗がかかります。重りをもってジャンプするのと同じなので、体が重く感じられます。
上半身も腕も脚も、地面から離れるぞ~と意気投合すれば、実際にジャンプをする脚を邪魔するものはなにもありません。だから重さを感じなくなります。

大きな筋肉の力の方向

大きな筋肉はアライメントの維持に関与しないため、ひたすらか骨(関節)を動かすことに専念します。

間違えた方法で動かしてしまうと、体が常に地面(引力と同じ方向)に向かいます。重力に歯向かうどころか、重力+(プラス)の力を体が受け止めることになります。すると体が重く感じられます。

小さな筋肉の力の方向

骨は積み重なっていますが、骨と骨が直接くっついて配列されているわけではありません。

骨と骨の間には、ほかの組織(軟骨、血管、神経、靭帯など)が存在することがあります。

だから硬く結束させるのではなく、可能な限り隙間を保つことが、体にとっては快適です。

そのため、小さな筋肉たちは骨と骨を隙間を広く保とうと働きます。

体全体としてみると、地面に対して上に(引力とは反対方向に)力が働きます。ちいさな筋肉たちがしっかり働いてくれると、体が軽く感じられます。

【見た目】

大腿骨骨頭と骨盤

適切なアライメントをキープさせると背が伸びます。

もちろん、子どもでない限り、骨が成長することはありません。ここで言う背が伸びる、とは、地面から頭のてっぺんまでの高さです。

骨と骨の間の隙間が広くなることで背が高くなったように見えます。

また、骨(体全体)が上に引っ張り上げる力が発揮されると、やはり背が高くなったように見えます。そして、堂々と見えます。

クラシックダンサーを思い浮かべてください。「スラっ」として「美しい」と思いませんか?

もし、彼らのお尻が後ろへ突き出ていたり、胸がやたらと前に突き出ていたらどうでしょうか?おそらく「スラっ」という表現はしないと思います。美しいとさえも思わないかもしれません。

お尻を後ろへ突き出ると その分背骨が前に倒れます。たったこれだけで数ミリ背が小さくなります。胸を突き出して(肩甲骨を引き寄せて)背骨がそっくり返っても同じです。まっすぐ上に伸びるはずのものが反ってしまうと その分背は小さくなります。

骨と骨の間の隙間が狭くなると、実際の身長は低くなります。これは軟骨がすり減ったわけではありません。単に骨と骨の隙間が狭くなっただけです。

その原因の一つは、大きな筋肉を誤った方法で鍛えることです。

例えば、「腹筋運動」。 どのような運動を思い浮かべますか?

膝を立てて仰向けになり、両手を頭の後ろで組んで、せっせと上体を起こす、そんな運動を思い浮かべた人は多いと思います。上体起こし、クランチ、などと呼ばれる腹筋運動ですが、これは注意が必要です。

いまだに誤った指導をしているトレーナーがいます。
「おへそに力を集中させて、そこに筋肉を集めて、腹筋を縮めましょう」は間違いです。

こうすると、腹筋が下方向へ縮むことを覚えてしまい、伸びなくなります。

運動後にストレッチをしても無駄です。
「腹筋に力を入れるときは、下方に力を入れる。」と脳が覚えてしまうからです。その結果、腰椎(ようつい)の間が狭くなります。股関節(こかんせつ)の関節の隙間も本来より狭くなります。

骨と骨の隙間が狭くなって、背が低くなるばかりか痛みも発症します。

では、上体起こしやクランチはどうやってやればいいの?と質問がきそうですね。答えは簡単。やらないが一番です。どうしてもやりたいのであれば、関節の隙間を広げながら行います。

【アライメントと見た目】

大腿骨骨頭と骨盤

骨を間近で支えている小さな筋肉たちが 本来の力を発揮すると、徹底して骨と骨の隙間を広げる働きをします。重力に反する力の方向なので、それはそれは重労働です。

無数にある小さな筋肉たちの誰かが仕事をさぼると、あっという間にアライメントが崩れてしまいます。

太ももの骨と骨盤を例に挙げてみましょう。

2本の棒の間に四角い骨盤がはまっていると考えてください。

この四角を支えるには、2本の棒は直立である必要はありません。「\ /」でも「/ \」でもどちらでも四角を支えることができます。しかし、体の構造上「| |」が一番スムースに体を動かすことができます。

上の図はお尻とお腹周りの図です。

 「| |」 と 「\ /」を見てもわかる通り、「\ /」の方がお尻やお腹が太く見えます。引き締まりのないだらしないお尻とお腹です。体重は関係ありません。

「40歳を過ぎてから身長が1cm伸びた」というのは嘘ではありません。アライメントが良くなったために地面から頭の先までの長さが長くなったのです。

「体重は変わらないのにサイズダウンした」というのも同じです。体重を落とそうと思っていたわけではないのに、姿勢を改善したらなぜか洋服がブカブカになるのも、全く不思議な話ではありません。

「身長は高いのに背中が丸まって自信がないように見える」
「太ってはいないのに、なんか引き締まりがなくだらしなく見える」

あなたはどんな見た目を選びますか?

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まとめ

【骨はからくり人形のように動く】

骨はただなんとなく整列しているわけではありません。

私たちは立っているとき、たった25cm程度の足の裏の面積で全身を支えています。

ですが、足の裏がべったり地面に接地しているわけではありません。「土踏まず」があります。「へん平足がよくない」というのはご存じでしょう?土踏まずは大切な役割を果たしています。

歩き出すとき、かかとから地面について、それから足の外側→小指の関節→4~2番目の指の関節→親指の関節(拇指球)→足が地面から離れるという順序で重心が移動をします。

重心が小指から残りの指全体に移動したころに、土踏まずが体重を吸収してクッションの役割をします。(土踏まずのアーチは潰れながら体重を吸収する)

それから親指が床から離れるころには、平面になった土踏まずがまた曲線をなして元の形に戻ります。

土踏まずが平面になったり、元の形に戻ったりするとき!足の骨は神業的な動きをしています。

ある一つの骨が動くと、それにつられて隣の骨が、そしてその隣の骨が、、とまるでからくり人形のように動き、足の裏にアーチができたり、平面になったりするのです。

からくり人形のような動きは 足から足首→スネの骨→膝→太ももの骨→骨盤→背骨・・・と動いていき、同時に力とエネルギーを伝えています。

【からくり人形とは・参考サイト】
元トヨタエンジニア政策のからくり人形、ロシアへ-YouTube

【エネルギーは循環する】

エネルギーの循環

AからBに力を加えると、同じ力がBからAに返ってくることを「反作用」と言います。

足で地面を踏むと、地面から反作用があります。

その力を足の裏で吸収し、それを足首→スネの骨→膝→太ももの骨→骨盤→背骨→胸郭→腕→頭と伝えていきます。骨がからくり人形のように動くからこそ、力の伝達、力の循環がおこります。

運動力学ではこれをキネティック・チェーンと呼んでいます。

ヨガで使われる“エネルギーの循環”、東洋医学の“気の流れ”も、同じように考えられるのはないかと、個人的には思います。

エネルギーの循環、血液循環、気の流れ…なんでも循環するものは、循環が良い方が良いに決まっています。(なんだか変な日本語ですね)循環を良くした方が健康になり、循環が悪くなると不健康になるだろうことは なんとなく想像がつくでしょう。

この循環をよくする一つの方法は、体のアライメントを適切にすることなのです。

【止まっているのに動いている?】

社交ダンス(競技ダンス、ボールルームダンス)を見ていて気付いたことがあります。

トップ選手のダンスを見ていると、ただ立っている(ポーズしている)のに、止まっているようには見えません。下層の選手になると、完全に止まって見えます。これはなぜでしょうか?トップ選手は自然に力を循環させているからだと私は思います。

動きが止まって見えるのは、実際「動き」を作る大きな筋肉の動きを止めているから。

ですが、実際はアライメントを維持する小さな筋肉たちは常に働いています。伸びやかに しなやかに見えるように、骨を引っ張り上げているのです、
そして、スムースに次の動作に移行できるのも、この小さな筋肉たちの働きのおかげです。

【参考サイト】
Final | 2021 PD World Standard | Dubai, UAE


第三章は実技です。第一章と二章の内容を知っているかそうでないかによって実技効果に差が出ます。

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